エピソード9:[現役エアラインパイロットが解説する] 国が疲労対策、新基準制定でパイロットの働き方改革が進む。
こんにちはトロポです。
今回は現役エアラインパイロットが解説するパイロットの働き方改革です。
このニュース「国が疲労対策として新基準を設定」したというものです。
「勤務時間インターバル」
これが設定されたのが今回は大きいですね。
難しいことは色々省略して解説しますね。
パイロット激動の時代の昨今ですが社会からの注目が集まるほど、
どんどんホワイト化していくのだな....と感じています。
- 疲労管理というシステムが重要視されるようになったのはアメリカのコルガン・エア墜落事故があったから
- 疲労ってそもそも何?
- じゃあ疲労管理ってどうしたらいいの?→睡眠管理
- 実際パイロットとして飛んでいて感じる疲労は?
- 地上業務との疲労の違いは?
- まとめ
疲労管理というシステムが重要視されるようになったのはアメリカのコルガン・エア墜落事故があったから
人が労働者として働く上で、その命を守り人間らしい生活ができるようにするために労働基準法というものがあって普段は皆その法に守られながら働いています。
今回のニュースでは、そこにさらに上乗せして パイロットの疲労管理というシステムが導入されたという話です。
そしてこの疲労管理システムが重要視されるようになったのは
コルガン・エア墜落事故が起きたからです。
事故概要
- 2009年2月12日 コルガン・エア(コンチネンタル航空とコードシェア運航、DHC8-400)3407便
- バッファロー・ナイアガラ国際空港にILSアプローチ中、突然機首が上がり失速。空港手前10kmのバッファロー郊外の住宅地に墜落。
- 乗客乗員全員(49名)死亡したほか、墜落現場となった民家で住人
が1名死亡、2名が負傷。 - 国家運輸安全委員会は、失速警報の設定ミス及び失速時の対処ミスが直接の原因としたが、その背景には、CVR(コックピットボイスレコーダー)に何度もあくびをするのが記録されているほか、乗務前にソファで仮眠するなど十分に睡眠が確保できていなかったことから、疲労が関与した可能性が指摘された。
アメリカの国家安全運輸委員会の指摘
疲労が要因の可能性となる航空事故が世界的にそれまでにもいくつか起こっており。米国の国家運輸安全員会は、米国の全公共交通における事故・重大インシデントのうち約20%に疲労が影響した可能性を指摘しました。
車やバスや電車に飛行機...事故の20%は疲労が影響したと国のトップが言ったんですよ!?
アメリカは国をあげて動き出しました。
疲労ってそもそも何?
操縦士の疲労の定義(ICAO Doc9966)
疲労とは、航空機の安全運航に係る業務を遂行するにあたり航空機乗組員の注意力や能力の低下を招く、睡眠不足、長時間の覚醒、サ-カディアン周期(生体リズム)又はワークロード(精神的又は肉体的な活動)に起因して、精神的又は身体的なパフォーマンスが低下した生理学的状態をいう。
簡単に言うと
注意力や能力が下がっている状態!
じゃあ疲労管理ってどうしたらいいの?→睡眠管理
米国宇宙航空医学学会によれば
疲労(脳の疲労)を回復させるものは、睡眠であり、
疲労リスク管理とは、睡眠管理
と示されているのです。
この考え方を基にパイロットが必要な睡眠が取れるよう基準を作ったのです。
欧米ともに「8時間の睡眠」の確保を前提としています。
だから8時間寝るには10時間は最低でもインターバルいるよねーっということで今回、勤務時間インターバルは10時間以上という基準が設定されたのです。
最低8時間は眠ること、これがワールドスタンダードです。
グローバル化×パイロット不足が予想される航空業界ではしっかりした世界標準にならった疲労管理体制が担保されていないと
- パイロット不足で現役パイロットが超激務で疲労し、危険なインシデントが起こる。
- いざ世界からパイロットに転職してきてもらおうと思っても、毎月のフライトスケジュールが過酷だと「そんな会社で働きたくない」と断られる。
そうなると回り回って不利益を被るのは航空会社を使うお客様、になっちゃうんですよね。
ちなみにバス業界ではインターバル8時間が基準でそれでは足りないと問題になっていますね。
も疲労管理体制が整っていなかったのが一因と言われています。
パイロットの世界はどんどんホワイト化していって制度が整ってと、時代の流れを感じる日々です。
実際パイロットとして飛んでいて感じる疲労は?
地上業務と比べると種類の違う疲労感がありますね。
パイロットの中でも会社にそして機種によって全然働き方とか勤務スケジュールとかフライト先が違うから疲労の感じ方は人それぞれですけど
国内線ならやっぱり1日で4回とか離着陸するとフライト後、ベッドにダイブして「ふー」ってなりますね笑
長距離国際線は本当に人によって差があります、時差とか深夜とかもフライトがあるので。
私はまだ若手なのでがっつり寝れば全快します。
ところでフライト前日のなかなか寝付けない時間は、パイロットの皆さんはみんな嫌いなんじゃないですか?笑
注意!
プロなのでオフの日からそれなりにフライトに良い状態で臨めるよう色々やってますので安心してくださいね。
パイロット、実は健康オタクの割合が超超超高いです。
地上業務との疲労の違いは?
地上職といっても何をやるかによるんですが.....
でもやっぱり時差/勤務時間/気圧/日光/座る時間が長い、だとか
常にATCを聞いて周りの情報をインプットしながらフライトもしてと、情報にずーっと浸かっててそれを更新し続けている。
離着陸の時に神経を研ぎ澄ましている。
そして何よりも
「意思決定」をし続けている。
連続したDecision Makingってもの凄いエネルギーを使うんですよ。
溢れだす情報を取捨選択して、次はこれするこう対処するその連続性やその密度はなかなか他の職種では再現できないんじゃないですかね。
飛行機って止まれないんですよね。
まとめ
パイロットの疲労管理の基準はグローバル化、パイロット不足の中、設定されるのは安全を守っていくためには当然の流れだった!
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そうなれば私が自分のつてで色々なエアライン関係者に実情を聞いて、その結果を記事にまとめることができるので皆さんに有益な情報をもっともっと送ることができます。
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おしまい。